答えを言わずに進める声のかけ方

手が止まった人に数字を教えてしまうと、その1マスは埋まりますが、次に手が止まったときも同じように教えることになります。答えを言わずに、どこを見ればよいかだけを示す言い方に切り替えると、本人が自分で書き込む場面を残せます。

「この段、もう1回見てみましょうか」「ここの3つのマスに何が入っているか、一緒に数えてみましょう」といった、見る場所を指すだけの声かけが扱いやすい型です。数字そのものには触れず、目を向ける先だけを示します。段・列・ブロックという呼び方や、候補を絞り込む考え方はナンプレの解き方 基本テクニックにまとめてあるので、声のかけ方に迷ったら先にそちらで用語を確認しておくと、卓の上でも同じ言葉を使えます。

ナンプレ以外の紙でも同じです。間違い探しなら「右の絵の上のほうを、左と見比べてみましょうか」、迷路なら「入口から指でたどってみましょう」のように、見る場所か指を動かす場所だけを伝えます。

指を差すだけで気づく人もいれば、何度示しても気づかない人もいます。2〜3回同じ声かけをして動きがなければ、それ以上は同じ方向で粘らず、次の項目にある難易度の下げ方に切り替えます。ヒントを重ねるほど、本人にとっては「できない」という印象が強くなることもあるため、切り替えの判断は早めにしておいて構いません。

声をかけたあとは、すぐに言葉を重ねず、少し間を空けて手の動きを待ちます。指を差した直後に矢継ぎ早に別のヒントを足すと、考える時間より聞く時間のほうが長くなってしまいます。10秒ほど待っても手が動かなければ、そこで初めて次の声かけに移る、という間の取り方を意識すると、急かしている印象を与えずに済みます。

その場で難易度を下げる具体策

声かけだけでは進まないとき、その場で難易度そのものを下げる手段がいくつかあります。どれも紙を作り直す必要はなく、いま渡している紙のまま、あるいは他の紙に替えるだけでできます。

  • 1マス埋めて渡す。 空いているマスのうち1つに、職員があらかじめ数字を書き込んでおいてから渡します。残りのマスを埋める作業に集中できます
  • ブロックを1つだけやってもらう。 盤面全体ではなく、太い枠で囲まれた一区画だけを今日の目標にします。終わったらそこで区切ってかまいません
  • 2人で1枚。 1枚の紙を2人で見ながら、交代で数字を書き込みます。会話をはさみながら進められるので、1人で黙々と埋めるより気が楽になる人もいます
  • 時間で区切る。 「ここまでできたら今日はおしまいにしましょう」と、マスの数ではなく時間で終わりを決めます
  • 軽い束に替える。 手元の紙が難しければ、同じ種類の軽い束に替えます。このサイトの束でどれからどれへ替えられるかは、次の見出しの表にまとめました

どれか1つを試して様子を見て、それでも進まなければ次の手段に移る、というくらいの軽さで使ってください。難易度を下げること自体は、その日の様子に合わせた紙の選び直しであって、特別な対応ではありません。

いくつかを組み合わせてもかまいません。「2人で1枚」にした上で「時間で区切る」、「1マス埋めて渡す」に加えて「ブロックを1つだけ」など、その人と場の状況に合わせて重ねて使えます。下げた難易度をそのまま次回も使う必要はありません。 その日の体調や気分によって解ける範囲は変わるので、次に配るときはまた通常の難易度から様子を見て構いません。

このサイトの束で、軽いほうへ替える組み合わせ

同じ種類でも、対象ごとの束で紙の中身が違います。配っているPDFを測った値で、替える先を並べました。替える先の紙を、配る日の束と一緒に数枚刷っておくと、その場で渡せます。

種類いま渡している束替える先測った値で変わるところ
ナンプレ高齢者向け(9×9)介護レク向け(4×4と6×6)埋めるマスが49〜55個から10〜24個に減る
迷路デイサービス向け(144〜324マス)介護レク向け(どれも144マス)正しい道が最長133マスから最長55マスに、分かれ道が最多28か所から10か所までに減る
点つなぎ高齢者向け(点30個)機能訓練向け(点24個)点が6個減り、線1本の長さが平均15.5mmから20.3mmに伸びる
間違い探しデイサービス向け(違い5〜10か所)介護レク向け(どれも5か所)探す違いが5か所にそろう
ナンクロデイサービス向け(9×9)高齢者向け(7×7)盤に入る語が24〜31語から16〜24語に減り、1マスが17mmから19mmに大きくなる

表の数は、それぞれのページに載せている測った値(手がかりの数・正しい道の長さ・点の数など)から出しています。ナンプレの埋めるマスは、盤のマスの数から手がかりの数を引いた数です。ナンプレの4×4は数字が1から4の4つだけなので、9×9で手が止まった人に「今日はこちらで」と渡すときも、ルールを言い直さずに済みます。

替えた紙は、その日だけのものとして扱います。次の回にどちらから渡すかは、前の項目のとおり、その日の様子を見てから決めます。

やめどきの見極めと、気まずくならない終わり方

同じマスを何度も消しては書き直す、紙から目をそらす時間が増える、ため息が増えるといった様子が見えたら、続けるより区切るほうを選びます。やめどきは「解けるかどうか」ではなく「その場の様子」で決めます。

やめるときは、途中であることを詫びるような言い方をせず、「今日はここまでにしましょう」「続きはまた今度」とだけ伝えます。紙を回収するときも、できたところまでを職員が先に見て、「ここまで書けていますね」と一言添えてから片付けると、途中で終わったことが本人の中で気まずさとして残りにくくなります。

同じ卓の他の人が先に終わっている場合は、その人たちの答え合わせを別の場所で進め、やめた本人には少し間を空けてから声をかける、という順番の工夫も使えます。

区切ったあとは、その紙をすぐに片付けず、しばらく本人の近くに置いておく方法もあります。時間を空けて気持ちが切り替わり、自分から続きをやりたいと言い出すこともあれば、そのまま片付けを頼まれることもあります。どちらになっても、区切ったこと自体を職員から蒸し返さないようにします。

できた人への声かけ

できた人への声かけは、具体的に何をしたかを言葉にするほうが伝わります。「すごいですね」だけで終わらせず、「ここの段、全部自分で埋めましたね」「難しいところも飛ばさずに続けましたね」のように、その人が実際にした作業を指して伝えます。

他の人と比べる言い方は避けます。 「〇〇さんより早かったですね」は、比べられた相手にも、比べた側にも良い印象を残しません。同じ卓の中での順位ではなく、その人自身がその日にやったことだけを見て声をかけます。

早く終わったからといって、次の課題をすぐに追加で渡す必要もありません。終わったことをそのまま受け止めて、次にどうするか(もう1枚渡すか、休憩にするか)は本人の様子を見てから決めます。

褒め言葉は、毎回同じ一言を繰り返すと上滑りして聞こえるようになります。「今日は全部埋まっていますね」「さっきより迷わず書けていましたね」のように、その日その紙で実際に見えたことを言葉にするだけで十分で、大げさな表現を足す必要はありません。淡々と事実を伝える言い方のほうが、かえって本人に伝わることも多くあります。

職員が言いがちで、言わないほうがいい言葉

現場でつい出てしまう言葉のうち、避けたほうがよいものを挙げます。

  • 急かす言葉。 「早く」「まだですか」は、書く手をかえって止めます。時間で区切る対応に置き換えます
  • 比べる言葉。 「〇〇さんはもうできてますよ」「隣の人を見てください」は、比べられた本人の意欲を下げます
  • 年齢に触れる言葉。 「その歳で」「歳のわりに」は、褒めているつもりでも本人には引っかかる言い方です。年齢に関係なく、その日の作業そのものを見て声をかけます
  • できないと決めつける言葉。 「これは難しいですよね」と先に言ってしまうと、本人が試す前から諦める理由を渡すことになります。難しそうであれば、言葉で決めつける前に、難易度を下げる手段に切り替えます

これらは特別な注意ではなく、その場の空気を重くしないための言い換えです。急かす代わりに時間で区切り、比べる代わりにその人自身の作業を見る、というだけで、卓の雰囲気は変わります。